暗算ができるできないの差
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最終更新日:2018/09/14
そろばんについて, 暗算 計算力, 暗算
そろばんを教えてるとそろばん(珠算)以上に生徒によって差がでるのが暗算です。
同じ学年の生徒で、珠算の級は同じでも暗算の級は2つ3つ異なることもあります。
さて、一口に暗算ができるできないといっても、そろばん教室で扱う暗算には見取算(足し算、引き算)、かけ算、わり算と3つに分かれます。
とはいうものの、一般的に暗算ができると耳にしたならば、見取算(というよりも足し算、引き算という表現が適切)が早く解けたり、2桁や3桁以上の計算もすらすら解けることも意味するでしょう!
というわけで、今回の記事の中での暗算ができるできないというのは、「複数桁の足し算、引き算が速く計算できるか否か」と定義させていただきます。
また、今回はそろばんを習っている子供に対する見解です。
日頃の解き方の違い
まず挙げられるのが普段の暗算の見取算の解き方の違いです。
全国珠算学校連盟の暗算検定の見取算は、現在7、6級が1桁と2桁で構成されており、5~3級の見取算が2桁の揃いとなっています。(なお、平成28年以前は7~3級の問題が2桁の揃いでした。)
そこで日頃自分の級で練習するときにどのように見取算を解いているかです。
1つ目は筆算のように一の位の数だけを先に計算し、次に繰り上がった十の位を計算する方法です。
2つ目はシンプルに全ての数字を一度に計算する方法です。
例)37+6+14=57(※本来は縦表記です)
1つ目の方法は先に7+6+4を計算し、解答欄に上記の計算の答えである17の7だけを書きます。
次に繰り上がった17の十の位の1に、3と1を足し解答欄に5を書き加えます。
そして先に書いてあった7と合わせて57という答えを出します。
2つ目の方法では問題上の数字をそのまま37+6+14と計算し、57を導き出します。
この2つの違いですが、後者の方法(1回の計算で答えを求める方法)こそが珠算式の暗算力が身につく計算方法であることに間違いありません。
前者は珠算を習ってない大人や、筆算式の求め方といえるでしょう。
当然ながらそろばん教室では後者で生徒に指導しますが、実際に本人がどのような方法で計算しているかは別です。
もちろん解答の書き方や指の動かし方で見抜くことはできますが、一度前者の楽なやり方に逃げてしまった生徒は、なかなか矯正できないのが現実です。
というのも、後者の解き方は長い目で計算力が大きく付くのは間違いないですが、実際には検定試験や目先の点数を気にするからです。
指導者としては急がずに先を見据えて後者の方法を採用して欲しいのですが、子供は正答率の高い前者のやり方を知ると、そういった解き方でそのまま進んでしまうのです。
私が普段指導するときは、級が進み、問題が難しくなってその生徒が壁に当たったときに、前者の方法を教える場合もあります。
もちろんその生徒の力量によっては今は間違ってもいいし、解ける数が少なくてもいいからそのままの方法で解くように言います。
結論としてはどちらの方法で暗算を解いているかで、最終的な暗算力の差は大きなものになります。
前者の方法ではいつまでたっても結局は1桁の計算しかできませんし、後者の方法で日頃から頑張れば、3桁4桁と計算力は付きます。
指導経験のある方ならわかるのですが、同じ暗算2級に合格した場合であっても、その解き方で実際には暗算力に大きな差があるのです。
男女の違い
また、男女による違いも印象的です。
暗算が得意で他の子よりも抜きに出ている場合、ほとんどが男の子になります。
もともと男性の方が女性よりも理数系が得意とも言われますし、暗算はそろばん以上に右脳を使うため、脳の仕組みや働き方に違いがあるからかもしれませんが、私は脳についての専門家ではありませんので、教室での印象をご紹介します。
上で紹介した通り、2つの計算方法の後者を採用した場合、前者に比べて正答率は下がります。
つまり、間違えが増えます。
間違えがあることは当たり前ですが悪いことではありませんし、間違えるのは当然です。
むしろ成長するには間違えることが必要ともいえます。
しかし、子供は間違えや×をもらうことを嫌い、間違えることを恐れることが多くあります。
特に女の子の場合保守的なことが多く、間違えを恐れるため、見取算で1桁ずつ計算し、確実に○を取りに行くのです。
本人的には無意識かもしれませんが、端から見ても賢明堅実にやるなぁと関心しますが、それじゃあ計算力は身につかないのになぁと残念に思ってしまいます。
2桁ずつ計算する能力がある子には 、分けずに計算するように言うのですが、保守的なためチャレンジしないのです。
また、概ね「答えが合っているからいいじゃん。」と言われてしまいます。
逆に男の子の場合、間違えを恐れずにどんどんチャレンジする子が多くいます。
これは読上算をする場合にも同様で、男の子場合は2桁、3桁、4桁と問題を難しくしても、どこから来るのかわからないほどの自信を持って暗算で計算しようとする子もいます。
一方で読上算でも女の子は2桁になるとすぐにそろばんを用いて計算しようとします。
暗算で解かせてみて実際には正解できる問題であっても…。
暗算力を身につけるには、チャレンジして暗算で計算できる幅を広げることが必要になります。
女の子には簡単な問題から徐々に難しくし、自分が暗算で解ける難易度を把握させ、ここまでは安心して暗算で計算できることを認識させ、そこから徐々に間違ってもいいから解かせる難しい問題にもチャレンジさせることが大切です。
以上2点、長くなりましたが私が思う暗算力の差についてご紹介しました。
子供の暗算力に大人が求めがちな裏技などはありません。
数年かけて習い続けるそろばん(暗算)だからこそ、日々の解き方で将来の計算力に大きな結果の違いが生じるのです。
といってもこの話を子供に説明し、納得してもらうのが何よりも難しいのですが…